地域社会への貢献
当社は、社会のニーズに応え、地域の社会経済発展を支援するために、社会貢献プログラムを実施しています。2021年は約20億円にのぼる社会貢献投資を行いました。特に次世代の教育・育成に力を入れており、2021年の当社の社会貢献投資額全体の約30%を占めます。また、オペレータープロジェクトにおける地域社会との対話や貢献活動については、東京、パース、ジャカルタ、アブダビの担当者間の定期的な会議を通じ情報共有を図っています。
オーストラリアでの取組み
オーストラリアにおいては、地域社会の教育、福祉支援及び地元企業の能力開発の支援に力を入れた社会貢献投資を行っています。2012年以降、オーストラリアにおける社会貢献活動への投資総額は840万豪ドルを超えており、2021年には、小規模な地域支援からNPOとのパートナーシップなど、30以上のプログラムを支援しています。
事業活動を行う地域にて、より有意義な社会的効果を生み出すべく、近年は、更に規模の大きい長期的なパートナーシップの確立に焦点を当てた社会貢献活動を実施しています。
2021年は、引き続き多くのプログラムが新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことから、プログラムの持続性を支えるための柔軟な対応を行いました。
地域社会におけるメンタルヘルスの支援
2021年末、当社は、Menzies School of Health Research(Menzies)と協同で、先住民のメンタルヘルス支援のための携帯アプリ「Stay Strong」をダーウィンにて発表しました。
このアプリは、イクシスが資金提供を行い、Menziesが開発したもので、先住民向けにメンタルヘルスの情報提供を行うための、カラフルで使いやすい無料のデジタルツールです。現在、オーストラリアの先住民言語の一つであるPitjantjatjara語又は英語で使用可能であり、今後は、更にこのほかの先住民言語を加える予定です。
このツールは、元々、医療従事者と先住民の患者の間での、メンタルヘルスについての会話をサポートするためにタブレット用に開発されたものです。コンサルテーション、共同開発、導入に10年以上を費やし、その受容性、実用性、効果が確認されています。
Menziesの予防福祉及び慢性疾患部門長であるトリシア・ナゲル教授は、シンプルで実用的なこの携帯のアプリを開発できたことを嬉しく思うと評価し、「携帯版のStay Strongアプリにより、包括的なメンタルヘルスのサポートシステムがより手の届くものとなり、オーストラリア全土におけるさまざまなサービスで利用が可能となります。」とコメントしました。
医療従事者や先住民のステークホルダーからは、この携帯アプリの使用は、患者の健康やメンタルヘルスの自己管理を手助けしていると報告されています。
インドネシアでの取組み
インドネシアのアバディLNGプロジェクトにおいては、環境や伝統文化の保全、経済的機会の創出など、地元コミュニティの持続的な発展に貢献すべく、2009年からさまざまな活動を行ってきました。活動は、ステークホルダーとの対話を通じて地域コミュニティのニーズを把握し、中長期的な視点で戦略的に策定したSocial Investment Strategyに基づいて実施しています。
2020年12月には、「Social Investment Strategy 2021-2023」を策定し、5分野(①地元の経済力強化、②教育、③公衆衛生、④環境、⑤戦略的社会貢献)に重点を置いて、さまざまな取組みを計画・実行しています。このうち、2021年に実施した取組みは以下のとおりです。
奨学金及びメンタリングプログラム(Scholarship & Mentoring Program):
現地の選抜学生向けに大学及び大学院教育の奨学金を支給するとともに、奨学金を受給されている学生に対するコーチング及びメンタリングプログラムを提供。
清潔で健康的な行動プログラム(Clean & Healthy Behavior Program):
プロジェクトサイトの最寄りコミュニティにおける清浄な飲料水の確保を支援するため、貯水槽と給水パイプラインの導入についてコミュニティ及び地元政府と協働して実施。更に、地元政府と共に、コミュニティに対して公衆衛生や水管理に関する行動の啓発・普及活動を実施。
伝統織物生産訓練プログラム (Tanimbar Ikat Weaving Development Program):
マルク州タニンバル諸島の伝統織物である「イカット(Ikat)」文化の保護や継承、普及促進、新規市場開拓などの支援を実施。
環境保全プログラム (Environmental Preservation and Conservation Program):
地元環境当局と協働し、市街地の主要道路沿いに現地固有種の樹木の植林を実施。また、現地の公園の整備や維持管理を実施。
インドネシア 伝統織物生産訓練プログラム
当社は、2017年より、マルク州タニンバル諸島の伝統織物である「イカット(Ikat)」文化の保護や継承、普及促進、新規市場開拓などを目的とした伝統織物生産訓練プログラムを実施しています。これまでにも、本プログラムで生産したイカットを用いたファッションショーをジャカルタや東京で開催しています。2021年には、イカットの生産技能の継承、生産したイカットの普及促進やビジネス機会の創出などを目的として、主に以下の取組みを実施しました。
- 20名のイカット生産者の技能向上とメンタリング
- 中小ビジネスに関するメンタリング
- 生産したイカット製品のギャラリー(2か所)を現地に建設
INPEX教育交流財団における奨学支援
本財団は、1981年3月に設立されて以来、インドネシアと日本の留学生の交流を通じて、両国の相互理解、友好、親善の発展に寄与することを目的として奨学支援事業を行っています。
同財団の年度末である2022年3月までに受入れた奨学生数は、インドネシア人144名、日本人61名を数え、奨学生の多くは、各人が留学時に取り組んだ研究開発分野で、それぞれの母国に貢献しています。
アブダビでの社会貢献活動
当社のアブダビでの事業活動は、2015年の陸上油田権益取得、2017年の上部ザクム油田権益延長、2018年のサター油田・ウムアダルク油田権益延長及び下部ザクム油田権益取得により、新しいフェーズに入りました。また、2019年にはOnshore Block 4を落札し、探鉱活動に取り組んでいます。今後40年にわたるUAE/アブダビとの長期的な協力関係を更に深化させるため、当社は同国が重要課題としている青少年教育を中心とした社会貢献活動に取り組んでいます。
アブダビでの公文式学校展開
2018年からSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育の基礎となる算数計算能力を幼少期に身に付けることを目的として、公文教育研究会、アブダビ国営石油会社の御協力の下、アブダビの4つの小学校で公文式算数の導入を開始し、2019年からは日本以外で世界初のタブレットによる公文式学習の導入も開始しました。2020年以降はコロナ禍による在宅学習に対応すべく、教材をデジタル化し、タブレットなどを利用した新しい学習方式による公文式算数の展開を実現しました。現在は9校/約6,000名の生徒を対象に展開し、2021年からは当社からの資金提供も行い、今後も対象学校・生徒を更に拡大していくことを目指しています。
高校留学生のドバイ万博でのアンバサダー
アブダビの日本人学校では、現地の国民子弟を受入れており、彼らの教育のために他社と協力して教員を派遣しています。日本人学校を卒業して、日本の高校・大学に留学しているアブダビの学生5名が、我が国の経済産業大臣からドバイ万博の日本館PRアンバサダーに任命され、日本文化の魅力発信の一翼を担ってくれました。
柔道普及・選手育成
アブダビ現地での柔道の普及を目的として、日本から東海大学の柔道講師を招聘し、若手選手育成にも協力しています。毎年日本大使杯を開催し、UAE/アブダビにおける柔道普及に貢献しています。
日本での社会貢献活動
本社では、従業員有志によるINPEX社内募金を行っています。毎年従業員による投票で選ばれた、「環境」、「教育・次世代育成」、「地域社会支援」を活動テーマとしたNGO・NPO団体に対して、給与天引き方式で行われています。2022年5月には、当社の社会貢献の重点分野の一つである「教育・次世代育成」の一環として、(公財)ソニー音楽財団と(公財)サントリー芸術財団が主催する「こども音楽フェスティバル」に協賛しました。
また、2020年より、子会社のINPEXソリューションズを通して、中学・高校・高専・大学の学生向けに、経験豊富なベテラン社員による、エネルギー開発やエネルギー全般の情勢、気候変動に関する出張授業を行っています。2021年は横須賀市立野比中学校で「変わりゆくエネルギーの世界」と題した特別授業を、また群馬高専・環境都市工学科やほかの高専及び大学に対しても出張授業を実施しました。
秋田鉱場では、地域の方々と協業し、秋田市八橋地区の沿道(コスモスロード)での種まきを実施しています。長岡鉱場では、農業関係者や関係団体と協業し、越路原プラント周辺のごみ拾いや花壇の整備を実施しています。
直江津LNG基地では、市内の環境保全団体が主催する海岸清掃活動への参加や、事業所の近隣道路におけるごみ拾いや草刈りなど、地域の一員として美化活動に取り組んでいます。また、石油・天然ガスの誕生から私たちの生活に届くまでを映像で見せる基地内見学施設『INPEX MUSEUM』と、LNGタンクなど設備見学を組み合わせて、広く行政や地元住民、企業などからの社会見学の期待に応えています(2021年はコロナ禍により見学受入休止)。