適正な水管理
水管理や水リスク1への対応は国際的に注目されており、「適正な水管理」を当社の重要課題2の一つに位置づけています。
係る状況下、当社は、2022年12月に水管理に関する基本的な考え方とコミットメントを取締役会の決議により制定し、公表しました。
1 水リスク:現在及び将来の事業継続に必要な水の供給、気候変動に伴う異常気象による洪水の発生確率増加などの水関連のリスク
水管理に係る基本的な考え方及びコミットメント
基本的な考え方
当社事業の実施に伴う水資源への影響及び地域社会における持続可能性に配慮し、影響低減及び価値創造の取組みを推進する。
コミットメント
- 当社事業における水リスク評価の実施
- 国際的なリスク評価ツールを活用し、事業における水に関連するリスクを把握する。
- 水リスクが高いと評価された場合には、ミティゲーションヒエラルキー3に基づいた追加的な対策を策定・実行する。
- 水ストレス4の高い地域における淡水取水の制限
- 事業における淡水の取水に伴い、地域の水資源への著しい影響が予見される場合、その淡水取水を制限する。
- 取水/水使用/排水の適切な管理
- 事業における水利用状況(取水量・排水量・利用用途)を把握し、3R(Reduce・Reuse・Recycle)の取組みを推進する。
- 産出水(随伴水)及びその他廃水について、適切な処理、及び排水管理を実施する。
- ステークホルダーとの協働
- ステークホルダーと協働し、地域の水資源の持続可能な利用に取組む。
3 開発によって生じる影響を回避、低減・最小化した上で、それでも残る影響に対し代償措置を講じるという優先順位。
4 水不足により日常生活に不便が生じている状態のこと。
水リスクの評価及び水ストレスの高い地域の特定
当社では、国内外のオペレータープロジェクトの立地地域が水ストレス5の高い地域に該当するかを、WRI6が開発した水リスクのマッピングツールである「AQUEDUCT」を用いて、毎年確認しています。2022年12月末時点で、当社オペレーションプロジェクトの実施エリアの水ストレスは高くなく、水不足に起因したプロジェクトのコスト増などは想定されないことが確認されています。地域の水リスクは様々な影響を受け、時間と共に変化することから、今後も継続して水リスクの確認を行い、高い水リスクが確認される場合には、ミティゲーション・ヒエラルキーに基づき、追加的な対策を計画・実行します。
5 水需給に関するひっ迫の程度を評価する指標であり、人口一人当たりの利用可能水資源量
6 World Resources Institute:世界資源研究所
淡水の効率的な利用
水資源のなかでも、淡水の取水管理は当社の水管理における主要課題であると認識しています。国内外のオペレータープロジェクトでは、取水量及び石油・天然ガスに随伴する産出水の排出を管理し、水資源への影響を低減する取組みを実施しています。当社のオペレータープロジェクトでは、淡水(上水、工業用水、地下水) を主に冷却、発電、及び掘削作業といった用途に使用しています。2022年度は、当社全体で約2,257千m<sup>3</sup>の淡水を取水しました。
また、国内においては、通常の冷却、掘削作業といった用途の他、冬季の消雪散水などのためにも地下水を使用します。淡水使用量の削減のため、冷却水の循環利用や消雪散水設備への自動発停装置の導入などに努めています。
イクシスLNGプロジェクトにおいては、水使用量削減に向けて、LNG 基地内の施設における淡水使用量の調査を実施し、プロセスからの処理廃水及び発電施設からの廃水蒸気水などの再利用の可否について、費用対効果を勘案し検討を進めています。
海水の利用
イクシスLNGプロジェクトの海上生産施設では冷却水として、また直江津LNG 基地では気化器における熱交換のために、淡水の代わりに海水を利用しています。これらの拠点で利用される海水は、取水温と排水温の温度差や残留塩素濃度などに関する操業国の法令や国際的なガイドラインの基準を満たしていることを確認した上で、海域に排水しています。
産出水の排水管理
石油・天然ガスの生産操業に伴い発生する随伴水は、地下に還元圧入、又は事業を実施する国及び国際的なガイドラインの排水基準を満たすことを確認した上で、排水しています。2022年度に発生した総随伴水量約133万m3のうち、60%は還元圧入し、残りは適切な処理を行った後、河川又は海へ排水しました。
産出水処理技術の調査研究
2015年度から2017年度にかけて、JOGMEC7の支援の下、千代田化工建設、メタウォーターと共同で、「セラミック膜による随伴水処理技術の小規模実証試験」を秋田鉱場の外旭川プラントにおいて実施しました。このセラミック膜を用いた随伴水処理技術を確立させたことにより、原油生産時の排水による環境負荷をより一層低減できることが期待されます。2018年度からはJOGMECと共同で事後調査研究を開始し、本技術の商業利用に向けた試験運転を実施しています。試験の結果、秋田県の定める河川の放流基準をみたす処理能力が確認されています。
2022年3月末までに累計運転時間23,123時間を達成するとともに、随伴水処理設備の建設並びに運転全期間を通し、約7年半無事故無災害を継続しています。本研究は2023年3月をもって終了しました。
7 Japan Organization for Metals and Energy Security:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構