HSEマネジメントシステム
基本的な考え方
当社の事業活動における「環境安全方針」の実行を確かなものにするために、2007年度にISO9001やISO14001などを参照してHSEMS規則を策定しました。2017年度には国際標準であるIOGPのOMS5101に基づきHSEMS規則を改定しました。OMS510は、リーダーシップ、リスク管理、継続的改善、そしてそれらの実施を基本原則としたシステムであり、HSEMSのパフォーマンスと有効性を向上させるための基礎となっています。これら基本原則に基づき、必要なHSE関連文書(規則、要領、指針など)の作成やHSE組織の整備、各事業本部へのHSE技術支援、HSE教育訓練、各種のHSEコミュニケーション活動、定期的なHSE監査やHSEレビュー等、HSEMSを実施する上で必要不可欠な構成要件をHSEMS規則に定めています。
当社国内最大の事業所である長岡鉱場においては、2003年度に環境マネジメントに関する国際的な認証であるISO14001を取得し、当社のHSEMSと連携し現在も認証を維持しています。
1 IOGPの報告書No.510 “System Framework for controlling risk and delivering high performance in the oil and gas industry”
HSEガバナンス
当社は、HSEに関し、取締役会及び経営会議による監督体制を取っています。オペレータープロジェクトを実行・管理するオペレーション事業体、ノンオペレータープロジェクトや子会社を管理する本社事業体及びコーポレート部門の本部長から構成されるコーポレートHSE委員会を定期的(2ヶ月に1回以上)に開催し、当社グループのHSE課題に対する取組みの立案・推進、リスク・機会の分析、HSEMSの運用状況と有効性のモニタリング等を行っています。コーポレートHSE委員会で決議された全社的に取り組む重要事項は経営会議並びに取締役会にて審議を経ています。2022年度は環境安全方針の改定及び生物多様性、水管理、廃棄物に関する当社の基本的な考え方とコミットメントについて経営会議及び取締役会で審議されました。
リーダーシップ
当社のHSEに対する意識を向上させるためには、「マネジメントが自らリーダーシップを発揮することが重要」という考えから、マネジメントが中心となって、積極的にHSE活動に取り組んでいます。2022年度に開催したHSE会議では、社長、コーポレートHSE委員となっている役員、国内外の事業体の最高責任者、労働組合代表者らの参加の下、2022年度に発生した事象の教訓の共有、プロセスセーフティ管理ロードマップの2つのテーマで議論が行われ、取り組むべきアクションアイテムが抽出されました。
また、INPEXバリューの一つである「安全第一」を実現するために、マネジメントが操業現場の作業に伴うリスクを直接理解すること、HSEの重要性の意義を直接に操業現場に伝えることを目的とした当社グループの操業現場へのHSEマネジメントサイトビジットを実施しています。2022年度も新型コロナウイルス感染症への対策を十分に施し、国内8か所、海外2か所の合計10か所の現場にマネジメントによるHSEマネジメントサイトビジットを実施しました。
国内 |
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1 |
南長岡フラクチャリング作業現場 |
2 |
秋田鉱場 |
3 |
山陰沖掘削作業現場 |
4 |
直江津LNG基地 他 |
5 |
南阿賀CO2EOR坑井掘削現場 |
6 |
オイルターミナル直江津 他 |
7 |
海野宿パイプライン工事現場 他 |
8 |
㈱テルナイト - 酒田工場及び技術研究所 |
海外 |
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9 |
JODCO Exploration Limited (アブダビ)- 掘削現場 |
10 |
INPEX Eagle Ford, LLC(米国) - 掘削・フラクチャリング・生産現場 |
マネジメントサイトビジット
7月に社長が山陰沖掘削作業現場を訪問しました。社長から「当社事業においてHSE管理や安全第一は最重要事項であり、安全第一と作業スケジュールは相反するものであるが、現場作業員には安全第一を優先した行動をとることが重要である」というメッセージが現場従業員に伝えられました。
11月には会長が秋田鉱場を訪問しました。坑井基地及びプラントの多くが民家に近接した状況の中、現場作業員、HSE担当者ともに安全意識を持って、地域の方々に理解を得ながら操業にあたっていること、ガスの安定供給のための施策に積極的に取り組んでいる様子を確認しました。
いずれの現場においても、マネジメントがHSE管理におけるリーダーシップを発揮し、また、マネジメントと現場従業員の間でHSEの取組みや課題に関して直接対話による意見交換及び議論を行う有益な機会となりました。2023年度もHSEマネジメントサイトビジットを継続して行います。各現場に対して、マネジメントによる統一されたHSE管理に関するメッセージの発信することにより、当社グループ全体のHSEに対する意識向上を目指します。
コーポレートHSEユニットはオペレーション事業体に対して、HSEに関する定例会議の実施を通じて、国内外プロジェクトのHSE活動に関する情報共有及び意見交換、コーポレートHSEユニットからの情報周知を実施しています。事故等を含む個別の課題の議論に加えて、毎年9月にはオペレーション事業体のHSE担当者と本社事業体、コーポレートの各本部からの関係者が一堂に会するHSEフォーラムを開催し、全社的なHSEに関する課題について集中的に議論しています。そして、HSEフォーラムにおける議論を経て抽出された重要な課題については、社長を含むマネジメント、労働組合役員も参加するHSE会議で議論され、翌年以降のHSE活動(HSE重点目標、HSEプログラム等)に反映し、実行しています。
HSEフォーラム
当社では、国内外のオペレーション事業体や本社事業体を含めたグループ全体のHSEパフォーマンスの向上を図るべく社内のベストプラクティスや教訓・経験を共有すること、HSE管理に関する全社的な戦略や計画を推進することを目的として、HSEフォーラムを2016年より毎年開催しています。
2022年は、2019年以降3年振りとなる対面によるHSEフォーラムを開催し、国内外のHSE担当者等の関係者が、オンライン参加者を含め計95名参加しました。4日間にわたり7つのセッション(HSEMS、労働安全、健康管理、プロセスセーフティ管理、セキュリティ・危機管理、環境管理、GHG排出管理)について議論を行い、今後もINPEXグループ全体でHSE活動を推進することを宣言し、本フォーラムを終了しました。これらの成果は、2022年11月のHSE会議で社長および役員に報告され、当社の更なるHSEパフォーマンス向上に活用しています。
HSE重点目標及びHSEプログラム
当社では、HSEMSの継続的改善を図り全社的なHSE管理を実現するために、コーポレートにおいて毎年HSE重点目標を定めるとともに、HSE重点目標を達成するための年間のHSEプログラムを策定して実行し、目標達成のための進捗管理を行っています。2022年度のHSEプログラムの主な成果として、
(1)環境安全方針を改定し、地球環境課題である生物多様性、水管理、廃棄物管理に対する当社の方針を新たに追記、また同課題に対する当社の基本的な考え方及びコミットメントを開示
(2) INPEX Vision@2022における「プロセスセーフティ管理の強化」を実現するための5か年計画「プロセスセーフティ管理の継続的改善のためのロードマップ2023-2027」を策定
(3)新型コロナウィルス感染症対策への取組みとして、従業員の出張時の健康リスクを管理し、レビューするための「海外渡航者COVID-19リスクスクリーニング」を開発
などが含まれます。2023年度HSE重点目標2は、2022年に策定したINPEX Vision @2022に基づき作成しています。
HSE法的要求事項の遵守
当社は、プロジェクト実施国の法令遵守を徹底して、事業活動を実施しています。
オペレータープロジェクトでは、HSEに関連した法的要求事項の特定、周知及び遵守、並びに変更時の対応について定めた社内要領に基づき、遵守すべき法的要求事項の把握及び遵守状況を管理するとともに、法令の新規施行や改廃などを定期的に点検しています。
また、ノンオペレータープロジェクトにおけるHSE法的要求事項の遵守の管理・関与の在り方について、関係部署と定期的に協議しています。
今後も、国内外のプロジェクトや関係部署と連携し、全社的にHSE法的要求事項を管理する仕組みを構築し、遵守に努めます。
HSEリスク管理
当社はオペレータープロジェクトによる負の影響を最小限に抑えるために、国際標準(ISO31000及びISO17776)に準じ、HSEに関するリスクを特定、分析、評価し、リスクが許容可能なレベルに低減したことを確認した上で事業を実施しています。
また、INPEX Vision @2022に掲げる重大な事故ゼロに向けて、HSEリスク管理を全社的に徹底するための活動の一環として、コーポレートHSEユニットでは全てのオペレータープロジェクトから重大事故災害3につながる可能性のあるリスク及びその他トップ10リスクの報告を四半期ごとに受領し、リスクがALARP4であることを確認するとともに、その要旨を経営会議へ報告しています。
3 大規模漏えいによる火災、爆発、毒性ガスの拡散などに代表される複数の死亡・重傷者を出したり周辺環境に深刻な被害を与えたりするような事象
4 As Low As Reasonably Practicable:合理的に実行可能な限りできるだけ低いこと
HSE文化の醸成
当社は、HSE最優先の考え方を組織に浸透させるために、これまでにHSEMSを整備し、HSE教育訓練を実施し、さらには事故調査で得られた事故からの教訓(LFI: Learning from Incidents)を全従業員に向けて共有する等のHSE文化の醸成に向けた取組みを実施してきました。そして、2020年10月にコーポレートを含む国内外の事業所における総勢2,400名超のINPEXグループ従業員を対象にHSE文化に対するアンケート調査を実施しました。2022年度にはアンケート結果を分析し、ここで得られた回答を数値として可視化することで、各事業所のHSE文化の特徴や強みと弱みを把握・分析しました。この分析結果を活用し、国内外の事業所で見出されたグッドプラクティスを全社的に共有する一方で、改善が必要な点については具体的な施策を検討・推進し、HSE文化の醸成に取り組んでいます。アンケートの分析結果を踏まえた改善のための取組みとして、2023年度はコーポレートの従業員に対してHSE管理の重要性を理解してもらうことを目的とした周知・啓発の取組みを展開することを計画しています。
また、HSE文化の醸成のための施策の一環として、組織や個人の士気向上やHSE意識の向上を図り、当社グループ全体のHSEパフォーマンスを向上させることを目的に、コーポレートHSE表彰を毎年実施しています。2022年度には、HSE優秀賞として団体1件、HSE活動賞として団体2件、個人4件の計7件が表彰されました。
HSE力量の向上
2022年度は、社内講習会並びに訓練に加え、eラーニングの配信により、延べ3,101人・時間のHSE教育訓練を実施しました。これらに加え、若手技術系社員には、労働安全管理やプロセスセーフティ・エンジニアリングに習熟するために、継続的に国内外での実践的な社外研修の機会を提供しています。
さらに、HSEを担当する従業員には、専門分野別の育成目標を見据えて、OJT(On the Job Training)の機会や専門機関が主催する講習への参加などを通して、HSE力量の向上を図っています。引き続き2023年度も従業員へ教育訓練の機会を提供し、HSE力量の向上に努めます。
HSEアシュアランス
HSEアシュアランス強化の観点から、オペレータープロジェクト及びコーポレートにおいてHSEMSが確実に運用されているかを評価するため、毎年コーポレートHSE監査プログラムを策定し、オペレーション事業体及びコーポレートHSEユニットに対して定期的にHSE監査を実施しています。2022年度は、リスクベース方式5によるコーポレートHSE監査を海外オペレーション事業体に対して2件実施し、第三者機関によりコーポレートHSEユニットに対してHSE監査を実施しました。HSE監査により得られた結果については、必要に応じてHSEMSの改善に反映しています。
さらに、国内・海外のオペレーション事業体が主導する新規案件、本社事業体が企画するノンオペレータープロジェクトへの参加検討、加えて各所の水素・アンモニアプロジェクト等のネットゼロ5分野に関しても、当該プロジェクトの技術的、経済的な評価を行う社内レビューにも参加し、HSE側面の評価も実施しています。評価の結果として合意した是正処置については、その進捗を管理し、必要であればHSE業務支援を行い、是正処置を確実に実施することで、継続的改善を推進しています。
5リスクベース方式:監査計画時に被監査組織のリスク要因を考慮し、重点監査項目を絞り込むこと