当社は、エネルギーの安定供給とエネルギー・トランジションへの取組みを両輪で推進し、事業やバリューチェーンを通じて気候変動対応をはじめとしたサステナビリティの課題に取り組むことを、サステナビリティ経営の基本的な考え方としています。この考え方のもと、当社及び当社のステークホルダー双方にとって重要度の高いサステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)を中心にサステナビリティ経営を実践しています。
当社のマテリアリティは、環境・社会が当社に与える財務影響及び当社が環境・社会へ与える影響を勘案の上、特定しています。具体的には、当社の財務見通しに影響を与えるサステナビリティ関連のリスクと機会について、発生可能性及び財務影響の大きさにて評価するとともに、当社の活動が環境・社会に与えるインパクトについても発生可能性及び影響深刻度の大きさにて評価の上、マテリアリティを特定しています。
マテリアリティ評価のプロセス
当社の重要なマテリアリティを特定するために、社外専門家とのワークショップや、社外・社内ステークホルダーへのインタビューを経て、マテリアリティ評価を実施しました。具体的な評価プロセスは以下のとおりです。
自社のバリューチェーンとビジネスの理解
以下の社内の公表物・内部資料等を通じて、当社のバリューチェーンやステークホルダーを整理しました。
- 有価証券報告書
- 長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision @2022)
- INPEX Vision 2035
- 過去のマテリアリティ評価結果
- サステナビリティに関連する各種方針
- 人権デューディリジェンスの評価結果
- ステークホルダーエンゲージメントの結果
トピックリストの作成
以下の各種レポーティングガイドラインなどを参照し、自社に関連し得る課題を網羅的に抽出し、トピックリストを作成しました。
- GRI(Global Reporting Initiative)Standards
- ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)
- SASB(Sustainability Accounting Standards Board)Standards: Oil & Gas – Exploration & Production
- ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)基準
- SSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準
- Task Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD)
- Task Force on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)
- Ipieca Sustainability reporting guidance for the oil and gas industry
- 同業他社の開示資料
IROの定義
各課題と、自社のバリューチェーンとビジネスを照らし合わせ、短期・中期・長期に起こりうるIRO(=インパクト、リスク、機会)を定義しました。
評価基準の設定とスコアリング
当社のマテリアリティは、環境・社会が当社に与える財務影響及び当社が環境・社会へ与える影響を勘案の上、特定しています。具体的には、当社の財務見通しに影響を与えるサステナビリティ関連のリスクと機会について、発生可能性及び財務影響の大きさにて評価するとともに、当社の活動が環境・社会に与えるインパクトについても発生可能性及び影響深刻度の大きさにて評価の上、マテリアリティを特定しています。
発生可能性の評価軸については、当社や同業他社の過去の発生件数等、国や事業別のレーティングを参考に設定しています。
ステークホルダーエンゲージメント
当社が取り組むべき課題に対するステークホルダーの期待・関心事項を確認するため、社内外のステークホルダーへアンケート・意見の聴取を行いました。ステークホルダーには、役員・従業員・投資家・同業他社が含まれます。
調査の結果、当社にとって重要な課題の内部評価と外部ステークホルダーの見解が一致していることがわかりました。
優先課題の特定
「評価基準の設定とスコアリング」で算定されたスコアを基にマッピングを行い、優先的に取り組むべき重要課題としてマテリアリティを特定しました。
特定されたマテリアリティは当社のリスク管理プロセスに則り各部署の担当者から評価され、サステナビリティ推進ワーキンググループで議論されました。
マネジメントレビュー
マテリアリティはサステナビリティ推進体制の主要委員会であるサステナビリティ推進委員会及び経営会議で決議され、取締役会に報告されています。
特定されたマテリアリティ
当社のマテリアリティのうち、気候変動対応、セーフティ、人的資本は、環境・社会が当社に与える財務影響が重大であることより財務マテリアリティとして選定しています。
また当社のマテリアリティは毎年見直しを行っています。
担当役員からのメッセージ

本年は、環境・社会が当社に与える財務影響及び当社が環境・社会へ与える影響を勘案の上マテリアリティの再特定を実施しました。
特定された6つのマテリアリティは、気候変動対応、セーフティ、人的資本、人権、生物多様性、環境汚染対策ですが、そのうち、気候変動対応、セーフティ、人的資本は、当社に与える財務影響が大きいと評価されたため、財務マテリアリティとして、有価証券報告書へも開示しております。これにより、環境・社会が当社事業活動に与える影響についてより詳細且つ信頼できる形でステークホルダーの皆様へ届けることが出来たと感じています。
環境に対する取組みにおきましては、気候変動への対応はもちろんのこと、当社の事業の特性上、生物多様性保全への取組みや、万が一発生した場合には、深刻な環境影響をもたらす暴噴や油流出事故への対応についても重大な課題であると考えており、環境汚染対策もマテリアリティとして選定の上、今後も継続的に取組みを強化していく予定です。
また、社会への影響という観点から、人権への取組み強化は重要であると考えております。当社は、昨年より人権尊重の取組み強化を進めておりますが、本年人権課題の再特定を行った際には、石油・天然ガス事業のみならず、再生可能エネルギー事業も調査の対象に加えるとともに、従来調査対象としていた各プロジェクトパートナーのみならず、サプライヤーまで調査対象を広げた上で、特定された課題につきましては、軽減策を検討の上、モニタリングしていく予定です。
今後とも、特定されたマテリアリティを中心にサステナビリティ経営を実施する中で、エネルギーの開発・生産・供給を持続可能な形で実現してまいります。