新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応について
エネルギーレジリエンスへの貢献
当社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行に対し、世界各地の石油・天然ガス生産操業において、従業員の健康・安全を最優先にさまざまな感染防止対策を講じながら、安定操業を着実に継続し、エネルギーの安定供給に努めています。
2020年4月よりコーポレート危機対策本部(C-CMT)を設置し、国内外の拠点の新型コロナウイルスの状況を継続的に把握しています。その中で、世界各地の事務所及びプロジェクトサイトにおけるコロナ関連情報(コントラクターを含む感染者の情報、感染予防の取組み、課題など)をタイムリーかつ一元的に共有しています。また、関係部署合同で、全社的な対策を迅速に決定し、実行しています。具体的な取組みとしては、濃厚接触者を最小化するルールの整備、海外駐在員の安全を確保するための一時帰国・再赴任方針の整備、リモートワーク制度の整備・改善などに取り組んでいます。
なお、従業員に対する諸施策については、「コロナ禍における働き方」で紹介しています。
対応策
米国
- 操業現場の入構者に対するスクリーニングの実施や体温チェックによる感染監視対策
- 感染者発生時の対策・復旧手順の確立
- OSHA※1ガイドラインに準拠した、感染症対策・対応計画書の策定・更新とその運用
- ※1 Occupational Safety and Health Administration
アラブ首長国連邦
- 国営石油会社ADNOC※2のガイドラインに準拠した、PCR検査陰性確認や感染リスク低減策の実施
- 政府指定アプリでワクチン接種状況などを管理
- ※2 Abu Dhabi National Oil Company
日本
- 現場への操業要員以外のアクセス制限
- 感染者発生時に備えた作業場所のゾーニングや予備人員の確保
- 通勤時などの感染リスク軽減、家庭の状況に応じた業務推進のためのスーパーフレックス導入や在宅勤務の推奨
- 在宅勤務の長期化に伴う従業員へのフォロー
- 国内プロジェクトにおける、感染症対応計画策定
- 国内3事業拠点での従業員、家族、関係会社従業員への職域接種の実施
オーストラリア
- 隔離期間を含む特別シフトの導入や現場入構前の問診・検温・PCR/抗原検査の実施
- 州政府の行政措置に従い、地域社会の感染状況に応じたボーダーコントロールの実施(各州の感染状況に応じてリスクランクを設定、対象州/準州からの入境者に対し、PCR検査などの強化や感染対策を実施)など、プロジェクト内での感染リスクを低減するガイドラインの運用)
- イクシスLNGプロジェクト独自の取組みとして、PCR検査要件及び洋上での感染対策を含むリスクマトリックスを作成・活用した、洋上施設での現場要員の感染防止対策の実施
コロナ禍での安定供給・安定操業のための各拠点の取組み
オーストラリアのイクシスLNGプロジェクト、インドネシアのアバディLNGプロジェクト、国内の各操業拠点では、現地政府からの要請や規制、当社独自の取組みによって、新型コロナウイルス感染防止対策を徹底しながら、安定操業を達成しました。これらの取組みには、当社の優れた取組みを表彰する「2021年度コーポレートHSE表彰」に選定された活動もあります。
Insight
新型コロナウイルス感染拡大を想定した洋上施設における危機対策訓練
2022年2月、イクシスLNGプロジェクトのFPSO(沖合生産・貯油出荷施設)において、複数の新型コロナウイルス感染者が発生したことを想定した危機対応訓練を実施しました。本訓練は、FPSOにおいて新型コロナウイルス感染拡大が発生した場合に想定される、初動対応の効果及び連絡系統に基づくコミュニケーションの流れを実践し、確認することを目的に実施しました。
社内からは、当社の緊急時対応チーム(INPEX Perth Incident Management Team)、社外からは、西オーストラリア州公衆衛生緊急時対応センター、州政府衛生管理担当部局、西オーストラリア州警察が本訓練に参加しました。
訓練では、社内で作成された危機対応計画の効果を確認しました。また、社内外への連絡体制及び社外への情報公開の方法についても確認を行いました。
本訓練を通じて、より強力な危機対応計画を策定し、社外関係者との連携をより一層強化することができました。
豪州事業におけるコロナ禍でのメンタルヘルスに関する取組み
新型コロナウイルス感染症の感染拡大及びこれに伴う行動制限などは、不安やストレスといった心理的影響を誘引する可能性が高いと考えられています。
そのため、当社では、従業員のメンタルヘルスケアに係る取組みを進めています。イクシスLNGプロジェクトでは、従業員の健康と福祉のための活動推進を目的に、管理職によるメンタルヘルスケア研修の受講率を目標に掲げるなど、さまざまな活動を実施しました。
例えばこのメンタルヘルスケア研修は、健康管理に関するトレーニングを実施する専門機関にて開発された対面式のコースで、一般的なメンタルヘルスケアに焦点を当てた、以下のような内容を提供しています。
insight
- ストレス、うつ、不安傾向のサインの認識方法
- ストレスケアが必要な方へのコミュニケーションの仕方や具体的な対応事例
- 早急なメンタルヘルスケアが必要な方をサポートする方法
- 専門的なケアが必要な方をサポートするための重要な最初のステップ
- 自分自身のメンタルヘルスケアの方法
このような取組みにより、メンタルヘルスケアに対する理解の向上及び職場におけるその重要性を周知することで、人々が安心して声を上げ、サポートを求めることができるようになることが期待されています。
国内の各操業拠点における取組み
国内の各操業拠点では、従業員の感染予防対策を徹底し、安定操業を継続しています。
insight
- 個々人の3密回避対策の実践
- 体調管理、体調変化にも留意した勤務体制の実践
- 感染防止を視野に入れた個々人の判断による行動制限
- 社宅や社員寮において従業員同士の接触を可能な限り回避
- 従業員及びその家族を含めた体調の情報共有
- 事業所内で運転要員と他の従業員をゾーニングし、可能な限り接触を回避
- 当直交替時の申し送りをコンピュータ画面などにより間接的に行い、シフト毎の接触を回避
- 鉱場勤務者間で各地域におけるコロナ関連情報の共有
以上の取組みを徹底し、長岡鉱場、秋田鉱場、千葉鉱場、南阿賀鉱場の全鉱場において操業を継続しています。
国内においては、海外から入国した技術者の感染防止を徹底し、現場作業を滞りなく完遂することを目的に、プロジェクトごとに感染防止ガイドラインを定めています。本ガイドラインでは、技術者の入国前から帰国時までの手続、また滞在期間の行動管理について詳細に定め、体調管理や行動履歴の共有、行動規制などの感染防止対策を徹底しています。また、作業現場や事務所では、感染拡大防止のため、コントラクター別・勤務帯別に事務所を分散化し、パーティションの設置、共用設備の消毒、マスクやフェイスシールドの着用などの対策を実施しています。結果、感染者を出すことなくプロジェクトを遂行しています。
直江津LNG基地においては、新型コロナウイルス感染予防活動を推進しながら、操業開始以来初となる統合生産制御システム・操作監視用PC(DCS HIS)の更新作業を実施しました。DCS HISは基地の運転監視制御の中枢であるため、基地操業を継続しながらDCS HISを更新する作業に際しては、メーカーと徹底した事前協議や調整を行いました。また、更新作業を行う中央操作室(CCR)はオペレーターが常駐しているため、通常メーカー作業員に対して行う事前のPCR検査や健康観察に加え、作業エリア動線の確認、パーティション設置によるオペレーターとの動線分離、フェイスシールド着用、徹底した除菌など、細心の感染予防対策を立案・調整し、確実に実施しました。また、本作業期間中は、更新作業担当者もCCRに常駐して他従業員と接触しないよう考慮するとともに、集中した管理体制の中、短期間で連続して作業を行うことで、オペレーターや作業員の感染リスクを低減させ、感染者を発生させることがないよう管理しました。このような新型コロナウイルス感染予防対策の的確な管理を徹底した結果、操業を停止することなく、また感染者を発生させることなく、さらに無事故・無災害で作業を終了しました。
直江津LNG基地設備グループ 担当者のコメント
「コロナウイルス感染予防のために、オペレーターやメーカー、コントラクターと納得がいくまでコミュニケーションを繰り返し、作業現場における徹底した感染予防対策を実施しました。その結果、新型コロナウイルス感染者を一人も発生させることなく、安全に更新作業を完了しました。」
地域社会への貢献
当社は、2020年より、医療関係者を始め、感染拡大防止のために尽力されている全ての方々や、困難に直面した地域社会の方々を支援するための取組みを実施しています。
insight
イクシスLNGプロジェクトでのワクチン輸送支援
オーストラリアにおいては、西オーストラリア州北部のキンバリー地区の遠隔地へのCOVID-19ワクチンの空輸を支援しています。これは、Royal Flying Doctor Service (RFDS)、ヘリコプター運営会社のPHIと当社のパートナーシップによるもので、当社がヘリコプターのコストをカバーする形で、航空機の離着陸が困難となる雨季(通常11~4月)に、RFDSによるワクチン輸送のためにヘリコプターの提供を行っています。ワクチンは機内でマイナス70度に保たれて遠隔地へ輸送され、これまでに、Bidyadanga、Beagle Bay、One Arm Point、Lombadinaなどに所在する先住民コミュニティーへのワクチン輸送を支援しています。