コンプライアンスのフレームワーク
贈収賄・汚職の防止
贈収賄・汚職に対する法規制が厳格化する中、当社は、世界約20か国でプロジェクトを展開するグローバルカンパニーとして、贈収賄・汚職に対し、「Zero-tolerance(一切許容しない)」のポリシーを貫くことが重要と考え、全ての役員及び従業員に当社共通の価値観であるINPEXバリュー1の一つ「Integrity(誠実)」をもって行動するよう求めており、バリューに基づいた行動が人事評価上も求められています。贈収賄・汚職の防止に関しては、「行動基本原則」及び「行動規範」において、政治、行政との健全かつ正常な関係の構築(関係諸法令で認められる場合を除く政治寄附などの禁止)や、関係各国の贈収賄・汚職防止関連法令の遵守を定めており、政治活動に関する寄附は一切行っていません。また、2011年から国連グローバル・コンパクトに参加し、腐敗防止へのコミットメントを表明しています。
「行動規範」の下、「INPEXグループ グローバル贈収賄・汚職防止方針2」及びそれに関する社内規程類を整備し、贈収賄・汚職防止に取り組んでいます。
マネジメント体制
コンプライアンスに関する重大な事案が発生した場合には、コンプライアンス担当役員やコンプライアンス委員会が迅速に対応策を検討、対処する体制を確立しています。コンプライアンス担当役員及びコンプライアンス委員会は、監査役や監査役会、会計監査人、内部監査部門である監査ユニット及び子会社などの、相当する機関又は部署と連携し、(1)コンプライアンスに関する施策の立案・実施、(2)実施状況のモニタリング、(3)コンプライアンス意識の啓発、(4)違反についての報告受付と調査、(5)違反に対する勧告とそのほかの対応、(6)違反の再発防止策の策定などを行っており、コンプライアンス担当役員はこれらについて取締役会に定期的かつ適宜報告しています。コンプライアンス違反に関しては、懲戒を含む是正措置が取られることが行動基本原則と従業員就業規則によって規定されています。なお、2022年度にコンプライアンスに関する重大な違反事例はありません。
そのほか、委員会と職場との連携を確保するため、各職場にコンプライアンス推進管理者及び担当者を配置し、職場の隅々までコンプライアンス意識の浸透・深化に努めています。また、贈収賄・汚職防止、コンプライアンス教育やグローバルなコンプライアンス体制、内部通報制度に係る整備、運用状況については、内部監査を受けつつ、これらの適切な運営に取り組んでいます。
コンプライアンス教育の推進
当社の一人一人にコンプライアンス活動を実践してもらうことを目的に、全従業員を対象として、ハラスメントや差別の防止を含む、業務テーマ別、階層別のコンプライアンス研修を定期的に実施しています。2021年度には、国内事業所の一般社員向けハラスメント防止研修及び国内事業所・グループ会社向けの贈収賄・汚職防止と独占禁止法をテーマにした研修を実施しました。
また、海外事務所においては、各国の法令・文化に沿った「行動規範」を整備・運用し、グローバルなコンプライアンス体制の強化を進めています。国別の研修実績は、ESGデータ集に記載しています3。
3 ESGデータ集
コンプライアンス意識調査と管理職向けハラスメント防止研修の実施
当社では、毎年実施するコンプライアンスクイック診断に加えて、3年から4年に一度全従業員を対象にコンプライアンス意識調査を実施しています。同意識調査はハラスメントを含むコンプライアンス違反、組織風土、施策浸透状況等に関する約80問で構成されています。調査結果を受けて、管理職向けハラスメント防止研修を行い、その中で部下に対するハラスメント防止及び部下同士のハラスメント防止等の教育を行っています。
問い合わせ・内部通報制度と社内外対応
当社は、国内外の拠点において、社内外の全てのステークホルダーからの問い合わせや苦情・通報に真摯に対応しています。
社内においては、公益通報者保護法に準拠し、内部通報制度を運用しています。差別、人権、ハラスメントを含む通報全般を受け付けるヘルプラインに加えて、経営上重大な贈収賄・汚職、独占禁止法違反、不正な会計処理の3つのリスク分野に受付分野を特化する現地語対応を備えたINPEXグローバルホットラインを設置しています。ヘルプライン窓口は社内及び社外(弁護士事務所)、INPEXグローバルホットラインは外部委託先に窓口を設け、通報は匿名で行うこともできます。また、2022年6月に改正施行された公益通報者保護法を踏まえ、当社国内外事務所の役員及び従業員を対象としていた内部通報制度の利用者に、役員及び退職後1年以内の退職者を追加し、また、公益通報対応業務従事者の指定に関する条項を追加するなどの社内規程の改定を行うとともに、外部の専門家を招き、公益通報対応業務従事者向けの研修を実施しました。
また、通報者が不利益な扱いを受けないよう保護を徹底しています。さらに、常勤監査役に対し通報内容を速やかに報告するとともに、調査・対応結果を適時に報告することで、内部通報制度がより有効に機能するよう運営しています。
2022年度はINPEX単体で社内窓口8件、社外窓口3件の通報がありました。これら通報内容の内訳は、人権・差別・ハラスメントの疑いに関する通報が10件、就労に関する通報が1件、その他の通報が1件でした。なお、1件の通報が複数の内容に該当するケースも含まれます。通報を受け次第、コンプライアンス委員会が、弁護士などの専門家によるアドバイスを踏まえつつ、「コンプライアンス体制運営規程」及び 「内部通報規則」に従い適切に対処しました。2022年12月末時点で、人権・差別・ハラスメントの疑いに関する通報のうち3件は対応中となっております。なお、上記通報の中に、「行動規範」に規定する遵守事項に関する、処分対象となるコンプライアンス違反はありませんでした。国別の相談件数は、ESGデータ集に記載しています4。
地域住民やサプライヤーを含む社外のステークホルダーからの問い合わせについては、当社ウェブサイトに問い合わせ窓口を設置し、適時適切に対応しています。ウェブサイトに加えて、インドネシアでは、現地語での対応も行っています。また、オーストラリアでは、地域住民からの苦情を含む問い合わせに適切に対応するため、地域住民との対話及び苦情対応手順を定めています5。2022年には、いずれの拠点においても、同手順が適用される苦情の受け付けはありませんでした。
4 ESGデータ集
収賄・汚職防止(ABC)の取組み
2014年にコンプライアンス委員会の承認を得て、「贈収賄・汚職防止ガイドライン(ABC6ガイドライン)」を施行後、2017年度にガイドラインをABCポリシーに改定、手続要領を策定しています。さらに、2019年、ABCに関する当社の姿勢を包括的に明示するため、「INPEXグループ グローバル贈収賄・汚職防止方針」を策定の上、ウェブサイト上に公表しました。
これらに基づき、贈答及び接待授受の事前申請、 並びに新規のビジネスパートナーに対しては、ABCリスクに関する適切かつ必要なデューディリジェンスなどを実施しています。2022年度に国内で実施したデューディリジェンスは、計114件でした。なお、これらのデューディリジェンスは新規のビジネスパートナーのリスクレベルに応じて実施しています。
また、2015年度から、本社及び海外事務所に対するリスク評価を順次実施し、これらリスク評価の結果を受けた改善策の実行を通じて、ABC体制の整備と運用の強化に努めています。2022年度は、本社米州事業ユニット、及びヒューストン・サンアントニオ事務所でリスク評価を実施するとともに、ABC研修を実施しました。また、継続的に取り組んでいる新入社員及び中途社員向けコンプライアンス研修の中でABCを取り上げました。
そのほかグローバルなABCコンプライアンス体制の構築に向けて、パース、ジャカルタ、オスロ事務所等との間でコンプライアンス活動の情報共有や意見交換を定期的に実施しています。
なお、2022年度はABCに関する重大な違反や懲戒処分はありませんでした。
6 Anti-Bribery and Anti-Corruption
EITIを通じた透明性向上の取組み
当社は、2012年度から、石油・天然ガス・鉱物資源の採取産業から資源産出国政府への資金の流れの透明性を改善し、健全性を向上することを目的とした多国間協力の枠組みであるEITI に参加し、その取組みを支援しています。2023年5月時点で、57の資源国、日本を含む多数の支援国、採取産業企業やNGOが参加しており、当社のプロジェクト実施国のうち、EITI 参加国について関連するデータを提供しています。