コンプライアンス推進に向けた取組み
コンプライアンス体制
各種施策の立案や実施、モニタリング及びコンプライアンス違反発生時の対応(調査や是正、再発防止)に関しては、コンプライアンス担当役員及びコンプライアンス委員会が、監査役や監査役会、会計監査人、内部監査部門である監査ユニット及び子会社などの、相当する機関又は部署と適宜連携しながら実施しており、コンプライアンス担当役員はこれらについて取締役会に定期的かつ適宜報告しています。違反に関しては、懲戒を含む是正措置が取られることを行動基本原則と従業員就業規則によって規定しています。なお、2023年度にコンプライアンスに関する重大な違反事例はありません。
そのほか、委員会と職場との連携を確保するため、コンプライアンス推進管理者及び担当者を各職場に配置しており、コンプライアンス委員会事務局である総務ユニットは、コンプライアンス推進担当者との連絡会を定期的に開催し、コンプライアンス意識の浸透・深化に努めています。また、贈収賄・汚職防止、コンプライアンス教育・研修やグループ間でのコンプライアンスの協働強化、内部通報制度に係る整備、運用状況の各種施策については、内部監査を受けつつ、これらの適切な運営に取り組んでいます。
内部通報制度の整備・運用
社内においては、公益通報者保護法に準拠し、内部通報制度を運用しています。差別、人権、ハラスメントを含む通報全般を受け付けるヘルプラインに加えて、経営上重大な贈収賄・汚職、独占禁止法違反、不正な会計処理の3つのリスク分野の受付に特化し、約20か国語に対応したINPEXグローバルホットラインを設置しています。ヘルプライン窓口は社内及び社外(弁護士事務所)、INPEXグローバルホットラインは外部委託先に窓口を設け、通報は匿名で行うこともでき、通報のツールについても、メール・電話・郵便などデジタル・アナログいずれも利用可能です。
内部通報への対応
社内窓口の総務ユニット又は社外窓口の社外弁護士は、「内部通報規則」に従い通報受付日から20日以内に、事実関係の調査を開始する旨又は正当な理由により開始しない旨を連絡しています。調査にあたっては、通報者が不利益な扱いを受けないよう保護を徹底しており、コンプライアンス担当役員は、必要に応じて関係部門の協力を得ながら、調査を行い、是正措置・再発防止策を講じています。
さらに、常勤監査役に対し通報内容を速やかに報告するとともに、調査・対応結果を適時に報告することで、内部通報制度がより有効に機能するよう運営しています。
また、2022年6月に改正施行された公益通報者保護法を踏まえ、当社国内外事務所の役員及び従業員を対象としていた内部通報制度の利用者に、退職後1年以内の元従業員を追加し、また、公益通報対応業務従事者の指定に関する条項を追加するなどの社内規程の改定を行うとともに、外部の専門家を招き、公益通報対応業務従事者向けの研修を実施しています。
2023年度は当社において社内窓口7件、社外窓口4件の通報がありました。これら通報内容の内訳は、人権・差別・ハラスメントの疑いに関する通報が8件、就労に関する通報が2件、その他の通報が1件でした。2023年12月末時点で、人権・差別・ハラスメントの疑いに関する通報のうち1件は対応中となっております。なお、上記通報の中に、「行動規範」に規定する遵守事項に関して処分対象となったコンプライアンス違反はありませんでした。国別の相談件数は、ESGデータ集に記載しています。
贈収賄・汚職防止(ABC)の取組み
贈収賄・汚職に対する法規制が厳格化する中、当社は、世界約20か国でプロジェクトを展開するグローバルカンパニーとして、贈収賄・汚職に対し、「Zero-tolerance(一切許容しない)」のポリシーを貫くことが重要と考え、全ての役員及び従業員に当社共通の価値観であるINPEXバリューの一つ「Integrity(誠実)」をもって行動するよう求めるとともに、人事評価においても、当社職務行動評価のベースとなるコンピテンシーの中にバリューの要素を組み込んでおります。
贈収賄・汚職防止(ABC:Anti-Bribery and Anti-Corruption)に関しては、「行動基本原則」及び「行動規範」において、政治、行政との健全かつ正常な関係の構築(関係諸法令で認められる場合を除いた政治寄附やファシリテーションペイメントの禁止)や、関係各国のABC関連法令の遵守を定めております。また、2011年から国連グローバル・コンパクトに参加し、腐敗防止へのコミットメントを表明しています。
さらにABCコンプライアンスを強化するため、社内規程類としてABCポリシー・手続要領を策定しているほか、2019年に、ABCに関する当社の姿勢を包括的に明示するため、「INPEXグループ グローバル贈収賄・汚職防止方針」を策定の上、ウェブサイト上に公表しました。
これらに基づき、贈答及び接待授受の事前申請、 並びに新規のビジネスパートナーに対しては、ABCリスクに応じ、適切かつ必要なデューディリジェンスなどを実施しています。2023年度に国内で実施したデューディリジェンスは、計124件でした。
また、2015年度から、本社及び海外事務所に対するリスク評価を順次実施し、これらリスク評価の結果を受けた改善策を実行しており、リスクベース・アプローチに基づいたABC体制の整備と運用の強化に努めています。2023年度は、本社では欧州・中東事業本部、海外拠点ではオスロ・ロンドンでリスク評価を実施するとともに、ABC研修を実施しました。また、継続的に取り組んでいる新入社員及び中途社員向けコンプライアンス研修の中でABCを取り上げました。
そのほかグローバルなABCコンプライアンス体制の強化を目的として、パース、ジャカルタ、オスロ事務所等との間でコンプライアンス活動の情報共有や意見交換を定期的に実施しています。なお、2023年度はABCに関する重大な違反や懲戒処分はありませんでした。
EITIを通じた透明性向上の取組み
当社は、2012年度から、石油・天然ガス・鉱物資源の採取産業から資源産出国政府への資金の流れの透明性を改善し、健全性を向上することを目的とした多国間協力の枠組みであるEITI に参加し、その取組みを支援しています。2024年1月時点で、57の資源国、日本を含む多数の支援国、採取産業企業やNGOが参加しており、当社のプロジェクト実施国のうち、EITI 参加国について関連するデータを提供しています。
コンプライアンス教育の推進
当社の一人一人がコンプライアンスの意識を高め、日々の業務に活かすことを目的に、全従業員を対象として、ハラスメントや差別の防止を含む、業務テーマ別、階層別のコンプライアンス研修を定期的に実施しています。2023年度には、企業不正・企業不祥事防止等をテーマに、役員向けのコンプライアンス研修を実施しました。
また、海外事務所においては、各国の法令・文化に沿った「行動規範」を整備・運用し、グローバルなコンプライアンス体制の強化を進めています。国別の研修実績は、ESGデータ集に記載しています。
コンプライアンス意識調査と管理職向けハラスメント防止研修の実施
当社では、毎年実施するコンプライアンスクイック診断に加えて、3年から4年に一度全従業員を対象にコンプライアンス意識調査を実施しています。同意識調査はハラスメントを含むコンプライアンス違反、組織風土、施策浸透状況等に関する約80問で構成されています。調査結果を受けて、管理職向けハラスメント防止研修を行い、その中で部下に対するハラスメント防止及び部下同士のハラスメント防止等の教育を行っています。