Sustainability Report 2023

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Sustainability Report 2023

セキュリティ・危機管理

基本的な考え方

昨今のセキュリティ事情を取り巻く不確実性の高まりを受け、海外のセキュリティ管理の継続的な強化・改善を図っています。また、火災・爆発・油流出などの各種の事故に備えるべく、緊急時対応計画を準備し、訓練を通じて対応力の強化に努めています。また、近年では、新型コロナウイルスに代表される新たな感染症の脅威に加え、大雨洪水等異常気象による自然災害、また2021年のコロニアルパイプラインの事例のようなサイバー空間からの攻撃による操業停止等を新たな脅威と捉え、万が一の備えを強化しています。

セキュリティリスクの評価と管理の推進

近年、当社が事業を推進する主要な地域の一つである中東地域では、イランと米国の緊張関係の継続、アフガニスタンにおける政権交代、イエメン内戦の影響によるアラブ首長国連邦(UAE)へのミサイル・ドローンの飛来などが発生している他、ウクライナを含めた国際情勢の変化も、当社プロジェクトや従業員に影響を及ぼしうるリスクとして、継続的な注視が必要と認識しています。

当社は社員の安全を最優先に考え、特に海外出張時においては、万全の対策を講じることを重視しています。その一環として、危険地域に出張する社員のために、事前のセキュリティリスク評価を行い、適切な安全対策のもと渡航してもらう仕組みを整えています。

事前のセキュリティリスク評価は、政治情勢、治安情報など様々な要素を考慮しており、社員はいつでもその情報にアクセスが可能です。評価の結果に基づいて、必要な安全対策を判断し、適切な対応策を講じます。また、緊急時の連絡先や対応策についても準備し、万が一の事態に備えている他、必要に応じ、現地の詳細なセキュリティレビューを実施し、活動地域全体、操業現場、移動経路、宿泊場所などの状況を把握し、社員の安全確保に対して適切な対策を講じています。

関連海外拠点では、継続的にセキュリティリスク評価を実施し、安全面で必要な対策を特定・実施し、準備を整えています。

この他、社員に対しては、定期的にHEAT(Hostile Environment Awareness Training)を提供しています。HEATは、危険な環境での対処能力を向上させるための総合的なトレーニングプログラムであり、社員が異国の文化や環境に適応するための重要なスキルを身に付ける機会としています。

緊急時・危機対応体制の整備

当社では、コーポレート部門や国内外の事業体、また操業現場それぞれで緊急事態に備えた対応体制を構築しており、訓練などの機会を通じ、定期的に、緊急時対応関連文書の検証と更新を行うとともに、必要設備や備品の維持・拡充や、緊急事態発生時の組織間の連携の習熟に取り組んでいます。

2023年、危機発生時の対応要員の活動を支援するため、赤坂本社における危機対策本部室を全面的にリニューアルし対応力を強化したほか、首都直下地震に備え、東京近郊にバックアップ危機対策本部室の整備を完了しました。

緊急時対応訓練の実施

国内外の事業体では、年間計画に基づき緊急時対応訓練を単独、または本社と連携した形で実施し、継続的な能力向上を図っています。

継続的に操業上の重大事故災害の発生を想定した訓練を実施している他、2023年は本社と合同でサイバー攻撃を想定した訓練、海外拠点での治安情勢悪化を想定した緊急時対応訓練、首都直下地震を想定した、バックアップ危機対策本部との連携に焦点をあてた訓練等、多様な危機事象に対して訓練を実施しています。各訓練から得られた教訓を基に、既存のマニュアルの改善、新たな資機材・備蓄品の導入など、更なる危機対応能力向上に努めていきます。1月1日に発生した能登沖地震においても、日ごろの訓練の成果を活かし、迅速に要員の安全確保や被害状況確認、操業再開を行うことができました。

暴噴・油流出事故への対応

石油・天然ガス開発では、大規模な暴噴・油流出事故だけでなく、生産施設にあるタンクや配管からの小規模な油流出事故への対応も求められています。これは、周辺住民の方々への安全・健康上の影響や、地域社会の経済活動への影響が懸念されるためです。

当社では、他社で発生した事故の教訓を踏まえて、坑井、パイプライン及びプラントなどでの事故管理に必要な予防・封じ込め・対応の全ての面で体制を強化しています。事故の予防を目的に規則や手続を整備し、一貫した管理を行っています。また暴噴時に海底の暴噴制御装置が作動しなかった際の備えとして、キャッピング装置を提供するWild Well Control, Inc. と契約しています。加えて、世界最大の油流出対応サービス提供会社OSRL(Oil Spill Response Limited)とも契約し、大規模な油流出に対応できる体制を整備するとともに、油流出に対応するための技術に関しても継続的な知見の獲得に努めています。なお、2023年度は、当社のオペレータープロジェクトでの油流出事故は発生していません。