特集記事１:
エネルギートランジション

当社は、2050年ネットゼロカーボン社会を実現すべく、ネットゼロ５分野(水素・アンモニア、CCUS、再生可能エネルギー、カーボンリサイクル・新分野、森林保全)の事業を推進しています。

水素・CCSと再生可能エネルギー事業

2023年は、イタリアの大手電力・エネルギー会社であるEnel社のオーストラリア現地子会社への出資を通じて、オーストラリア再生可能エネルギー事業に参入しました。

また、水素・アンモニア事業において、ブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験(新潟県柏崎市)は、2023年７月に建設工事に着手した上で2025年運転開始を目標に、これを基盤としたブルー水素事業は、2030年頃までに商業化を目標にしています。オーストラリアでは、同年６月クリーン水素事業に係る事業化検討調査がオーストラリア政府補助金プログラムへ採択され、10月には日本水素エネルギー会社(JSE)に資本参加し、国際液化水素サプライチェーンの構築に向けた日豪間での実証事業への参画を決定しています。今回はその一部を特集記事で紹介します。

水素事業

2030年頃までに3件以上の事業化を実現し、年間10万トン以上の水素・アンモニアの生産・供給を目指します。そして、2050年までに国内需要の約1割の供給を目指します。

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石油・天然ガス分野のCO₂削減（CCS・CCUS）

2030年頃にCO₂圧入量年間250万トン以上達成を目標とし、技術開発・事業化を推進することで、CCS・CCUS分野におけるリーディングカンパニーを目指します。そして、2050年までにCCUS事業を確立し収益化を目指します。

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再生可能エネルギー

洋上風力・地熱発電事業を中心に、1~2GW規模の設備容量確保を目標に、M&A等により取得したアセットをプラットフォームとして事業を加速度的に拡大し、主要なプレイヤーとなることを目指します。また、2050年までに再生可能エネルギーを利用したグリーン水素¹ の製造も目指します。

¹ グリーン水素：風力などの再生可能エネルギーを利用し、水を電気分解することで製造される水素

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水素事業

https://www.youtube.com/watch?v=Ikfc9R0aXnI

水素は使用時にCO₂や有害物質を排出しないため、クリーンなエネルギーとして将来の普及が期待されています。

当社は東柏崎ガス田平井地区にて「ブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験」というプロジェクトに取り組んでおり、2025年度から年間700トンの水素を製造する予定です。

製造された水素の一部はアンモニア製造の原料として使用し、残りを水素発電の燃料として使用します。原料は当社が新潟県内で生産する天然ガスで、製造施設までの輸送には既存のパイプラインを使用します。また、水素及びアンモニア製造の際に副次的に発生するCO₂を既にガス生産を終了した東柏崎ガス田平井地区の貯留層へ圧入（CCUS）することで、本実証試験で製造される水素・アンモニアをCO₂の大気排出を抑えたブルー水素・アンモニアにいたします。CO₂の地下圧入開始後は、安全や環境に十分に配慮し、適切なCO₂圧入操業の監視と圧入したCO₂のモニタリングを実施する計画です。

本プロジェクトの特徴として、国産の天然ガスを用いたブルー水素・アンモニアの製造、国内枯渇ガス田でのCCUSの実施、さらに発電等による利用までを一貫して実証する日本初の試みであるということが挙げられます。世界を見渡しても、実際にプラント建設の段階にあるブルー水素・ブルーアンモニア製造プロジェクトは数少ないと認識しており、当社が有する枯渇ガス田及びCCUSの技術を駆使して、世界に先駆けてブルー水素、ブルーアンモニアの製造を実現する案件と言えます。

本実証試験により、当社は、水素・アンモニア製造、CCUS、水素発電等のサプライチェーン全体にわたる、技術と経験を他社に先駆けて習得・蓄積し、国内外で水素・アンモニア事業のフロントランナーになるための「実績」を獲得します。そして、この「実績」を活かし、新潟県等の日本国内のみならず、海外等でも、新たな案件の獲得・参画に繋げていきます。

担当者からのメッセージ

（左から、小畑さん、高瀬さん、金子さん）

金子創太（国内E&P事業本部 建設ユニット）

私はEPCチームの一員として、地上設備のプロジェクト管理業務に携わっております。本プロジェクトは世界的にも前例が少なく、正解の無い課題に直面することも多いですが、一つ一つ乗り越えたことこそが当社の知見になるとの思いを胸に、これからも無事故無災害に務めながらプラントの建設工事を推進していきます。

外部イニシアティブへの参加

水素バリューチェーン協議会 

政府との連携や国内外のパートナーシップの構築、政策提言、市場創出の支援など、水素産業の成長と発展を支援する活動を行っています。また、国内外の最新の技術動向や市場動向についての情報共有も行い、水素社会の実現に向けた国内外の連携を促進しています。

CCUS事業

https://www.youtube.com/watch?v=bM8ub5kGuHI

ボナパルトCCSプロジェクト（オーストラリア）

CCS（Carbon Capture and Storage：CO₂回収・貯留）とは、CO₂を長期にわたって地中深くに固定することで大気中へのCO₂排出を回避できる、実証済みの安全な技術です。国際エネルギー機関（IEA）は、CCSを世界的に大規模展開しなければ、2050年までにネットゼロを達成することは不可能であると結論づけています。

当社（オペレーター）、Total Energies社 、Woodside Energy社で構成されるボナパルトCCS評価共同事業体として、2022年にペトレル亜堆積盆地においてGHGアセスメント鉱区（G-7-AP鉱区）を取得しました。承認された評価作業プログラムには、2024年に実施される2坑の評価井掘削、新規3D弾性波探査収録、坑井掘削後の包括的な解析プログラムが含まれています。この評価プログラムは数億トンのCO2貯留プロジェクトを受け入れられる可能性があるペトレル亜堆積盆地がCO₂地下貯留に適しているかを評価することを目的としています。 

当社は、多様でクリーンなエネルギーを安定的に供給するため、上流事業の脱炭素化に積極的に取り組んでいます。当社が運営するイクシスLNGプロジェクト施設の計画的な脱炭素化においては、ダーウィン近郊の大規模なCCS施設の開発が重要な要素となっています。当社は、イクシスLNGプロジェクトをはじめとする地域の主要なCO₂排出事業者にボナパルトのCCSサービスを提供することで、CCSを大規模に実施する機会を創出します。 

ボナパルトCCSは、海外のCO₂排出事業者に対しても大規模なCO₂　地下貯留の機会を提供し、社会全体のグローバルなネットゼロのコミットメントに向けて貢献することのできる可能性を秘めています。ボナパルトCCSは、CO₂の回収、集約、液化、積載、出荷、ダーウィンでの受け入れ、貯留地への輸送、海洋での地下貯留に至るまで、CCSバリューチェーン全体の実現を目指します。 

当社のパース事務所のチームは、当社の、そして地域社会のネットゼロ目標を達成するための脱炭素化ソリューションの提供を目指し、ボナパルトCCSプロジェクトを2030年頃に実現させられるよう取り組んでいます。 

INPEXオーストラリア・グロース部門Vice President からのメッセージ

パース事務所のグロース部門を率いているスティーブ・オヴェンデンです。ボナパルトCCS（BCCS）プロジェクトは、当部門の最も重要な業務の一つです。私は、当社においても重要なBCCSプロジェクトを推進するため、オーストラリア事業全体から集めた専門家で構成される統合チームを統括しています。CCSマネージャーのスティーブン・カーティスは、地下評価、サブサーフェス、掘削、開発、HSE、サプライチェーン、政府渉外などの部門のサポートを受けながら、BCCSのビジネス機会の全体を管理しています。BCCSは、イクシスの脱炭素化において極めて重要な役割を果たし、2050年までに排出量ネットゼロを目指すという当社の意欲的な目標の達成を後押しすることが期待される、画期的なプロジェクトです。重要な点として、BCCSを実現することは、当社がイクシスLNGプロジェクトを営むうえでの“License to Operate”をより確固なものにすると同時に、バックフィルプロジェクト²や施設規模拡張の認可を取得するためにも必要なものです。対象となるペトレル亜堆積盆地の帯水層は、10億トンレベルの大規模なCO₂地下貯留の可能性を秘めています。そのため、BCCSは、ダーウィンエリアでの大規模なCCSハブ化に貢献するとともに、商業的に実現可能な事業としていくことを目指します。当社にとって非常に重要なプロジェクトに携わることができ、大変光栄です。

²別のガス田から原料ガスを受け入れること

外部イニシアティブへの参加

CCSプラス・イニシアティブ

世界で最も広く利用されている温室効果ガスクレジット・プログラムであるVerraのVerified Carbon Standard（VCS）の下で、CCUSのための炭素会計インフラを開発することを目指すイニシアティブに参画しております。CCUSの分野における最新の技術動向や市場動向についての情報共有を行い、CCS普及拡大を積極的に支援し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

再生可能エネルギー事業

再生可能エネルギー事業を手掛けるEGPA社への出資

当社は、オーストラリアでの資産ポートフォリオの多様化を目指し、再生可能エネルギー事業への参画機会とアセット取得に努めてきました。広範に及ぶ交渉と競争入札プロセスを経て、当社は2023年9月にEnel Green Power Australia（EGPA）社の株式の50%を取得しました。

当社は現在、ネットゼロに向けた目標の一つである、2030年までに1～2ギガワット（GW）の再生可能エネルギー設備容量の確保に向けて、着実に取り組みを進めています。

当社は、新たに設立した子会社であるINPEX Renewable Energy Australia P/Lを通じて、EGP社とともにEGPA社の株式を共同所有しています。EGPA社は、イタリアの大手電力・エネルギー会社であるEnel社の子会社で、シドニーに本社を置いています。

EGP社との合弁事業は、より低炭素な未来を実現する画期的な機会となります。当社はEGP社と連携して、オーストラリアにおけるEGPA社の再生可能エネルギー発電ポートフォリオを共同で統括し、新規プロジェクトの開発を通じて設備容量の増加を目指します。

EGPA社は現在、風力発電、太陽光発電、蓄電、これらを組み合わせたハイブリッドプロジェクトなどの再生可能エネルギー事業にオーストラリア全土で取り組んでいます。また、小売事業やトレーディング事業における取組みも拡大し、革新的なソリューションの提供を目指しています。それらを通じ、現在は2030年を目途としてオーストラリア全土で2～4GWの発電を目指しています。

NEBAからのメッセージ

INPEXとEGP社のジョイントベンチャーの組成合弁関係は、共通の価値観に基づいています。私たちは、“よりクリーンなエネルギーの未来”という共通の目標を掲げ、緊密に連携して取り組む、極めて有能なチームです。

当社では、パースの新エネルギー事業部門（NEBA）と、東京本社の再生可能エネルギー事業本部が連携して、EGPA社の資産管理を行っています。EGPA社が事業開発をダイナミックに推進する中、日々さまざまなことが起きており、当社は株主として積極的に関与しています。当社は、EGPA社の経営陣やローマのEGP社のチームと緊密に連携し、事業開発や事業運営を強力にサポートしています。NEBAは、多様なメンバーを擁する強力なチームです。EGPA社に関連する事業は、NEBAの多様なポートフォリオの中でも重要な位置を占めています。再生可能エネルギー事業の質と量の基盤を確立することにより、当社の新エネルギー及びカーボンオフセット事業の将来的な進展を支えます。EGPA社は、当社のグローバルな再生可能エネルギー事業において大規模かつ重要な資産です。2050年までにネットゼロを達成するという共通の目標の達成に向けて、当社のポートフォリオの多様化につながる存在です。